白玉庵のいちにち

表千家茶道教室

花月のこと

花月」のお稽古をしました。
七代目如心斎さまが考案された七事式のなかのひとつ。札の出方で、お茶をいただいたり、お点前をしたりするお稽古です。
「月」の札が出れば、お茶をいただく。「花」の札が出れば、お点前をするという約束があらかじめあります。
「百回やって、おぼろ月」と言われるくらい、その札の出方も幾通りもあり、気を配ることが多いお稽古です。あわただしいといってもいい、札の行き交い。自分が何をやったのか、流れに流されっぱなしで、自らの行動そのものがよくわからない、お稽古です。
あれは初めての「花月」のお稽古日のこと。「花月をいたしましょう」などと言われて、お菓子をいただいたりしていると、なにか楽しいことが始まりそうな気がしたものだから、わたしはとんでもないことを口にしたことがありました。「花月というのは、お茶のお稽古のお遊びのようなものでしょうか」
お嬢様が苦笑されたのはいうまでもありません。お茶にお遊びなどという項目はないのですから。
花月をいたしましょう」
とても暑い日に、先生はおっしゃいました。
わたしは、立ったり座ったり、きょうはしたくない。できれば、お茶をいただきたい。などと不埒なことを考えて座っていました。
ただ、たとえ不埒なことを考えたとしても、「月」の札があたることは天におまかせなのですから、思っても詮ないことではあります。
しかし、なんと思った通りになってしまったのでした。わたしはお席の移動もなく、はじめからおわりまで同じ席に座って、しかも、二度もお茶をいただいたのです。
全部で5人。お茶も5服と限られています。その貴重な5服のうち、2服ともわたしがいただいてしまったのですから、逆に一服もいただかない方もでてくる。おまけにその日はわたしと同じことを思った人がほかにもいたらしく、その方も2服いただいたのでした。こんなことは滅多にありません。「月」がふたたびあたったとしても、辞退してはいけないと決まっています。ほかの人に譲ったりするなど、とんでもない。非情の世界なのです。