白玉庵のいちにち

表千家茶道教室

詩集 いちどにどこにでも

あとがきにかえて 

あとがきにかえて 山本かずこ 「ごめん」行きと「いの」行き。「はりまや橋」から「大橋通」まで、と「はりまや橋」から「菜園場」までのわずかな区間ではあったけれど。電車の椅子にみんなと並んで腰掛けていると、私が旅人であるということは誰にも気づか…

「その日わたしは草であった」

その日わたしは草であった 山本かずこ 人知れず すくすくと ただ生い茂っていた その日わたしは草であった昨日は雨が降った その前もその前も雨が降った 雨量がとても多いこの地方でも 今年の雨は特別に多い だからわたしは この夏すくすくと育つことができ…

「いまでも時々思い出す」

いまでも時々思い出す 山本かずこ ちゅうおうせんの しゅいろの電車がはいってきた 小さな女の子(恵)が 若い両親と手をつないでいた 幸せそうにみえるのだった ドアがひらいたとき 両親は右と左にわかれてドアに向かう そのとき 小さな女の子(恵)の手を…

「ひとりをいのったばっかりに」

ひとりをいのったばっかりに 山本かずこ あの子が幸せでありますように(みんなむかしからのきやうだいなのだから けつしてひとりをいのつてはいけない)*けれども あの子が幸せでありますように わたしはおいのりを つづけました(みんなむかしからのきや…

「いちどにどこにでも」

いちどにどこにでも 山本かずこ (西の国で何か 不吉なことがおこっているのだよ)*わたしはそのとき、東の国で生きていたのか ええ、でも 同時に 西の国にも生きていたのだ 森のなかを遊び場にして わたしは いちどにどこにでもいることができる (生きて…