白玉庵のいちにち

表千家茶道教室

叔母からの留守電…。

 誰からの電話だろう、とおもっていたら、叔母からの電話だった。いつもの叔母の声だ。「かずちゃん、元気かね。」電話の内容は、死んでしまった母の人生についてだった。具体的に話しているわけではないが、わたしの中で知るかぎりの母の一生が走馬灯のように映しだされた。戦争で夫を亡くし、再婚した夫も病気で亡くし。自分も病気がちの一生だった。そのなかで子供たちに無償の愛を注いでくれた…。
 叔母はいつもの声でわたしに母のことを話してくれている。
 母は死んでしまったのだ、とわたしは叔母の声を通してあらためておもう。
 
 夢のなかで、叔母はいつもの叔母だった。懐かしかった。去年の一月倒れてしまって、いまは、夢と現のあいだをいったりきたりしている叔母だけれど、夢のなかの、電話の声はいつものやさしい叔母だった。
 途中で叔母はもとどおりになって、ひとりで電話もかけてこられるようになったのだとおもった。うれしかった。もしかしたら、母の死がショックで、叔母がもとどおりになったのかとおもった。(しかし、母はもう二十五年前に死んでいるのだけれど…)。
 もう一度、留守電を再生しようとおもったら、目が覚めた。
 もう一度、いつもの叔母の声を聞きたい。