白玉庵のいちにち

表千家茶道教室

『反貧困』を読む

 
 最新の「週刊読書人」(2008年6月13日金曜日発行日付のもの)に「日本の貧困を考える」という見出しで、湯浅誠という人と堤未果という人の対談があった。
 お二人の名前をわたしは知らなかった。家人から勧められて、読んだ。
 すぐに湯浅誠氏の『反貧困』(岩波新書 初版2008年4月22日)を近くの書店で買い求めた(次に堤未果氏の『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)を買うつもり)。それほどの対談であった、ということだ。少なくともわたしにとっては、そうだった。無駄な発言がひとつもなく、しかも迫力があった。
 読書傾向に全く脈絡のないわたしではあるが、約一年前(2007年7月7日付)の「『山谷崖っぷち日記』を読む」でも書いたが(以下、転載……。//この本にたどりつく前に読んでいたのは『ハードワーク―低賃金で働くということ』ポリー・トインビー著(東洋経済新報社)、『ニッケル・アンド・ダイムド―アメリ下流社会の現実』バーバラ・エーレンライク著(東洋経済新報社)でした。それから森永卓郎さんの一連の本も)、ハードワークの現状から目をそらすことなく、警告しつづける、この種の本を読んでこなかったとは言えない。
 しかし、その後、わたしは、ほかの本に目を向けていたのだろう、お二人の著書には全く気がつかなかった。というより、一連の本を読み続けて、大変疲れてしまったので、しばらくは読みたくないという気持ちが遠ざけていたのかもしれない。しかし、一年前にまとめて読んだアメリカやイギリスでの貧困の状況が、直視しないでいるうちにそのまま日本の状況になっていた。ここにきて、新聞でとりあげられはじめた、多くの暮らしていけない人々の現状に、国は何も手を差しのべないのか、と思ったりしてはいたが、『反貧困』で、国の非情さをいよいよ知らされる。
 いま、三分の二ほど読み進めてきたが、わたしは、湯浅氏のもう一冊の本も読みたいと思い始めている。『貧困襲来』(山吹書店)という本である。
 ところで、この『反貧困』の102ページでは、「なぜ、日本政府は貧困問題に向き合おうとしないのか」という問いかけをしている。その答えを湯浅氏自身はこのように書いている。
『貧困とは「あってはならない」ものだからだ。最低生活費以下で暮らす人が膨大に存在すること、それは一言でいえば憲法二五条違反の状態である。国には、当然にその違憲状態を解消する義務が生じる。貧困に対処し、貧困問題を解消させるのが政治の重要な目的の一つだというのは、世界の常識でもある。』と。
 貧困を放置することは、憲法違反なのだ。
 ここで「自己責任」という言葉を軽く使うことは許されない。それでなくても、横行する「自己責任論」が見えなくしているわたしたちの国の実態。その実態を、わたしは湯浅誠氏の著書から知る。アメリカやイギリスの国のことではなく、わが国の、現在(いま)を知る。