白玉庵のいちにち

表千家茶道教室

ほんとうの平将門 エピソード(「カランドリエ」2011年09月12日中秋号に発表)


神田明神の将門公)
                              山本かずこ
『真・将門記』を上梓しました。「真」と謳うからには、『将門記』というものが存在するわ するわけですが、これは、平安時代に生きた平将門の戦闘の記録を書いた書物。誰が書いたのかは、不明。その『将門記』を基にして、書き上げたのが『真・将門記』です。
平将門について書いてみたいと思い始めたのは、いまから五年ほど前に遡ります。ただ、将門公との今生でのご縁はいまから三十年ほど前にはすでに始まっていました。
当時、本郷にあった詩の出版社では、月に一度座談会があり、座談会ののちに鰻重でおもてなしをする決まりがありました。老舗のお店で、出前はしません。そこで、毎月、お重を取りに行って、翌日、空のお重を返しに行くのがわたしの仕事だったのです。八人分といえば結構重い。
 タクシーに乗ったわたしは、「神田明神下の神田川鰻屋)までお願いします」と言いました。これを五年間続けた。当時は、「神田明神」のご祭神が平将門だということを知らなかったばかりか、一度もお参りすることもありませんでした。それでも、わたしにとっては、毎月必ずその存在を意識しないではいられない、特別な神社でした。不思議なご縁のように思います。
 この本の第三章に、いまを生きる人たちへのメッセージがあります。お読みいただければ幸いです。
       平将門
人は大地とつながって生きていることを忘れないでほしい。いまの人は、人がつくったもののなかに埋もれて、根を忘れている。
人は鳥のように飛べるわけでもなく、魚のように泳げるわけでもない。大地に感謝を忘れずに生きてほしい。
そして、人はみな友だということを身をもって知りなさい。ささいなことでも、ともに泣き笑い、歌って踊る。そういう人の子の世を生きるよろこびを、いつも腹の底から涌き起こしてほしい。