白玉庵のいちにち

表千家茶道教室

バスの旅2富弘美術館へ。

 2010年9月14日(火)バスの旅のつづきです。
 梨狩り、足利フラワーパーク見学のあと、太田で昼食。「新田乃庄」でいただく。ここは、新田義貞のご先祖さま、初代新田氏(義重)のお城だったところだとか。太平記料理として「武将膳」の説明をしてくださった総支配人の京極屋氏は、当家の末裔だそうです。勝ち飯といわれた「もっそめし」を中心に、「ほうとう・おきりこみ」のいわれなど教えていただきました。美味しくちょうだいいたしました。
 食事の後は、一路、富弘美術館へ向かいました。当日まで、「栃木」というだけでどこに行くのかも知らなかったわたし。富弘美術館とは、星野富弘さんの作品を展示した美術館です。1970年、群馬大学卒業後、中学校の教諭になった星野さんは、クラブ活動の指導中に、頸椎を損傷し、手足の自由を失われました。
 以後、口に筆をくわえて文や絵を描いてきた、その作品が展示されているのでした。富弘美術館は、今年で20周年になるのだそうです。ちょうど「ささえられて」という企画展が開催されていました(9月1日(水)〜12月5日(日)まで開催)。
 しかし、わたしは、この美術館に入るまで、何も考えていなかったことに気づきました。自由行動が約一時間。わたしは、Yさんの付き添い人として参加しているのですが、目が見えないYさんに、星野さんの絵と文をどのように感じてもらえばいいのでしょうか。入場口の壁に書かれている星野さんの絵と文を前にして、わたしは、一瞬、立ち止まりました。すると、音声ガイドの貸し出しが目に入ったのです。これなら、星野さんの絵は見えなくても、星野さんの声が聞こえる。絵の前に立ったとき、絵に添えてある文章の朗読を星野さんの声で聞くのです。目が見えなくても、ねぎぼうずの絵を描いている前に立ち、星野さんの文章を星野さんの声で聞けば、きっとYさんに何かを感じてもらえるはず。わたしは、そう信じたかった。たっぷり一時間近く、展示会場を見て、聞いてまわったわたしたちは、お土産に(Yさんのお孫さんに)、星野さんの絵葉書を買い求めることにしました。絵葉書を探しながら、Yさんが「きょうは、山本さんのおかげで、すっかり文学青年になってしまったよ」と笑いながら言ってくれた。目が見えないYさんと、不思議な時間を過ごしたことを、わたしは忘れない。星野富弘さんの作品の数々は、これからもわたしにとってYさんと過ごした時間と切り離しては考えられないように思います。
 朗読される星野富弘さんの声は、おおらかで、明るい、とても「いい声」でした。